ご挨拶

このたび、日本地域看護学会第29回学術集会を、千葉県幕張メッセにて開催させていただくこととなりました。これまでの歩みを礎に、成熟した学会への発展に向けて実りある議論と交流の場となるよう準備を進めております。
今回のテーマは「希望ある未来を切り拓く地域看護の新機軸」です。
人生100年時代が到来し、現代社会は新たな人生のあり方を模索しています。長寿化は、働き方や学び方、余暇の過ごし方、家族のあり方など、あらゆる側面に影響を及ぼし、人生の多様性が広がりつつあります。こうした時代において、「健康」「生涯にわたる学び」「豊かな人間関係」は重要な鍵となり、従来の「当たり前」にとらわれず、新しい価値を見出していくことが求められています。さらにSociety5.0の取り組みにより、すべての人々が安全で快適な生活を送れる社会の実現に向けて、社会全体が動き始めています。テクノロジーの進化は、社会のありようだけでなく、人々の意識や関係性にも深く影響を及ぼすと考えられます。
現在は、そうした新しい時代に向かう過渡期であり、経済や地域格差に起因する健康格差、社会的孤立、虐待、多文化共生など、複雑で多様な課題が交錯しています。これらは行政のみならず、地域社会全体で乗り越えていかなくてはならない課題です。千葉県では、過疎化が進む地域において、民間と行政が連携し、子育て家族の移住支援など新たな取り組みが始まっています。全国的にも、職種や資格を問わず、多様なアプローチで住民の生活や健康を支える活動が広がっています。
これからの社会においては、立場や分野を超えて、「どのように人々の生活や健康を守っていくのか」「そのためにどのような地域をつくっていくのか」「そのための活動をどう生み出していくのか」といった未来志向の対話が、ますます重要になってきます。その中で、看護がどのように貢献できるのか、地域看護の新たな展望を描く時がきています。これまで培ってきた地域看護学の知見を基盤に据えながらも、既存の枠組みを超えて新たな社会的意義や価値を創造し、教育・研究・実践に反映させていく必要があります。本学術集会が、希望ある未来を切り拓く地域看護の新機軸を考える機会となることを期待します。
千葉県での開催は、実に17年ぶりとなります。会場となる幕張メッセは、世界規模のイベントも多く開催されるアクセス至便な場所です。自然豊かなスポットや歴史ある街並み、新鮮な海の幸など、千葉ならではの魅力も満載です。
学術集会が、皆さまにとって学びと心の豊かさを育むひとときとなることを願い、企画委員一同、心よりお待ちしております。
日本地域看護学会第29回学術集会
学術集会長 佐藤 紀子(千葉県立保健医療大学)




